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硬派な iPhone アプリ開発入門書「iPhone SDK アプリケーション開発ガイド」書評

10 月あたりからしばらく暇になりそうなので、そろそろ本格的に iPhone アプリでも作ってみようかと思っています。そこで、良い解説書はないかなーとおもっていたところ、折よく「iPhone SDK アプリケーション開発ガイド」という書籍がオライリーから発売されたので、試しに購入してみました。

これが個人的には大ヒットで、他のプラットフォームで経験を積んだプログラマーが iPhone アプリ開発をはじめるにはぴったりの内容でした。言葉や図による説明よりもコードを重視した、硬派な iPhone アプリ開発入門書になっています。

このブログの読者の方々にもきっと役立つ書籍だと思いますので、本日はその書評をお送りしたいと思います。

概要

言うまでもありませんが、本書は iPhone ネイティブアプリケーション開発の解説書です。第一章、第二章では iPhone SDK のインストールとその使用方法を丁寧に紹介し、その後の章では SDK の各コンポーネントの使い方を網羅的に解説しています。いずれも基礎を丁寧に解説することに重点がおかれているので、その点では iPhone アプリ開発の入門書と言えるかもしれません。

しかし、決して「iPhone でプログラミングをはじめよう」的な甘い入門書ではありません。読者には基本的なプログラミング能力(とくに C/C++ の知識とソースコードの読解力)が備わっていることを前提として、必要なことを無駄なく淡々と解説しています。

他のデスクトップ(もしくはモバイル)アプリケーション開発に習熟した開発者をターゲットにした、「大人の」iPhone アプリ開発入門書に仕上がっています。

本書の良いところ

本書の一番の美点は、なんといってもその絶妙な「突き放し感」。サンプルのスクリーンショットなどを除けば、図解はほとんどありません。それどころか、メソッドの解説では少しの概要説明のあとに呼び出しコードを示すだけで、個々の引数の説明などいっさいなし(Objective-C は引数を名前付きで書くので、だいたい予測がつきますが)。「細かいことはコード読め」という著者の意思がビンビン伝わってきます。

そして、各節の最後で完全なサンプルコードを示し、さらなる調査のためにヘッダファイルの場所を示して締めくくります(著者いわく、「ヘッダファイルには何が利用できるかがすべて書かれている」そうです ^^;)。一見不親切ですが、この簡潔さがむしろわかりやすいと感じる方も多いのではないでしょうか。

そもそも、ある程度熟練した開発者であれば、開発環境のセットアップや簡単なサンプルアプリの開発くらいは難なくできてしまいます。しかしながら、その次に壁となるのが、プラットフォームに関する包括的な知識です。そのプラットフォームにはどのような機能があり、それぞれの機能はどうすれば利用できるのか。プラットフォームの特色を生かした高度なアプリ開発には、その幅広い理解が欠かせません。

本書が提供しているのは、まさにそういった「広範な基礎知識」なのです。 iPhone SDK の多数のコンポーネントそれぞれについて、それを使うために重要な知識をきっちりと解説しつつ、それ以上の詳細はヘッダファイルの場所を示すだけで次に進む。そのようにして必要な情報を効率よく凝縮し、この一冊でほとんどのコンポーネントが網羅しています。しかも、すべてに実用的なサンプルコードが示されているのですから、たいへんな情報密度です。

さらに通好みなのが、 Interface Builder を使わずに、すべての UI をコードで構築している点です。 Interface Builder を前提にするのと比べると SDK に対する理解度がまったく違いますし、ちょっと凝った UI を実現するのには必須の知識です。ほんとうにこの著者さんはわかってますね。

本書の足りないところ

iPhone アプリ開発に必須の知識のうち本書で大きく省かれているのが、 Objective-C に関する情報です。第一章で若干触れてはいるのですが、 C/C++ の知識があったとしても苦しいほどの簡潔さです。ましてや C/C++ を知らないとなにを言ってるのかさっぱりでしょう。また、 Map Kit や Push Notification など、 iPhone OS 3.0 で追加された機能の解説もありません。

これらの情報については別の書籍を購入するか、 iPhone Dev Center にある日本語のプログラミングガイドを参照すると良いでしょう。

そうそう、 OpenGL ES も触れられていないので、こちらの記事をどうぞ!

まとめ

ということで、まとめると、本書は以下のような方にお勧めです。

  • 他のデスクトップ(or モバイル)プラットフォームの開発経験がある。
  • iPhone アプリ開発をこれからはじめる、もしくはまだ iPhone SDK の全体像を把握できていない。
  • iPhone SDK のさまざまな機能を活用したい。
  • Interface Builder で構築できる範囲を超えたダイナミックな UI を実現したい。
  • 日本語よりC言語の方が得意(笑)

これらに当てはまる方には、たいへん有用な書籍であること間違いなしです。 iPhone SDK 習得までの学習期間を大幅に短縮することができるでしょう。

iPhone SDK アプリケーション開発ガイド(3,400円)

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