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WebOS の未来を模索する、ゲームプログラマあがりの Web 開発者のブログ。

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Chrome OS 雑感

本日早朝、 Google が Chrome OS のプレスイベントを開催し、 Chrome OS の説明を行いました。私も英語が苦手にも関わらず WebCast を見たので、雑感というか、ありそうな疑問への自分なりの考えを書いてみようかと思います。私も実際に Chrome OS を触ったわけではないので、間違いがあったらご勘弁を。

まあ、個人的なごたくを並べているだけですが、なにかの参考になれば幸いです。

Chrome OS ってなに?

Google が開発しているネットブック向けの OS です。その特徴は、

Google Chrome ブラウザしか動かない

というひと言に集約されます(汗)

OS を起動すると同時に(若干カスタマイズされた) Google Chrome ブラウザが起動し、すぐに Web ブラウズが可能です。いわゆるデスクトップアプリケーションを動作させることはできず、 Web アプリケーションですべての作業を行います(後述のとおり、 Chrome ブラウザのエクステンションを除く)。昔あったシン・クライアントの焼き直しと言えばそうなのですが、現在の Web は当時よりずっと強力になっているので、その意味ではまったく別物と言えます。

このような構成にすることにはいろいろメリットがあって、主なものを挙げると・・・

起動速度が速い
動作しているアプリケーションは Chrome ブラウザだけなので、起動やレジュームが高速です。デモでは 5 秒くらいでレジュームが完了していました。
他のマシンでも同じ環境が使える
基本的にデータは全てクラウドに保存するので、複数のマシンからアクセスできます。当然 Web アプリケーションもマシンを問わず利用できるので、どのマシンでも同じように作業が行えます。
セキュリティーが高い
デスクトップアプリケーションを一切認めないので、コンピュータ・ウィルスなどの攻撃は受けづらくなります。もちろんブラウザにセキュリティーホールがあればどうにもなりませんが、それは自動アップデートで迅速に修正されるとのことです。
低価格なハードでも動く
Chrome OS はオープンソースで無料ですし、少ないリソースでも動作します。また、インテル CPU 以外に ARM もサポートするようなので、その意味でも低価格化が期待できそうです。

というところでしょうか。 Chrome OS の詳細はこちらのリリースから辿ることができますので、もっと詳しく知りたい方はそちらをどうぞ。

Google はなんで Chrome OS を作ったの?

Web の利用を促進させるためです。 Google はその収益の大部分を Web 上の広告から得ているので、人々がより多くの時間を Web で過ごすようになれば、 Google の収益も上がるというわけです。

また、 Web での存在感を増しつつある Microsoft に対抗するため、少しでも Windows のシェアを削っておきたいという思惑もあるでしょう。もちろん公式に認めているわけではありませんが。

Web アプリケーションだけで実用的なの?

まあ皆さん予想がつくでしょうが、現時点ではかなり厳しいかなと思います。誰でもたいてい、「これがなければ使い物にならない」というデスクトップアプリケーションがひとつはあるでしょう。私も Emacs が動かない PC は使いたくありません(笑)。

しかし、そういった一部のアプリケーションを除けば、ほとんどの作業は Web 上で行える(行っている)ことも事実です。 Chrome OS の登場によって Web アプリケーションの開発が進めば、デスクトップアプリケーションから決別できる日もそう遠くないのかもしれません。

Chrome OS で動く Web アプリケーションは、他のブラウザでも動くの?

基本的には動きます。ただし、 HTML5 の機能を活用したものになるでしょうから、それをサポートしないブラウザでは動作しない可能性もあります。

デスクトップアプリケーションは動かないの?

まったく動きません。プレスイベントでも「Android 用の Java アプリは動かないのか?」と食い下がっている人がいましたが、それをやってしまったら「Web アプリケーションの利用を促進する」という Google のメリットが失われてしまうので、おそらくそこは動かないでしょう。

ただ、 Chrome ブラウザ用のエクステンションが、ある意味で Chrome OS 用のデスクトップアプリケーションのような役割を担うかもしれません。 Firefox のエクステンションほどではありませんが、クロスサイト XHR など通常の Web ページよりは自由度があり、しかもローカルにインストールされます。

とくに現在の OS でいう常駐ソフトのような類いは、 Chrome ブラウザのエクステンションとして提供されていくと思われます。

Chrome OS が普及したら、ほかの OS はなくなるの?

物凄く長期のスパンであればその可能性はあるでしょうが、しばらくは共存していくと思います。例えば Chrome OS はサーバーには使えませんから、少なくとも開発の現場ではデスクトップ OS が使い続けられるでしょう。

一昔前のワークステーションと PC のような棲み分けが、 Chrome OS と他のデスクトップ OS の間で構築されるのではないでしょうか。

Chrome OS によって、 Web アプリケーション開発はどう変わる?

もっとも大きな変化は、オフライン対応がとても重要になるということです。デスクトップアプリケーションが使えない Chrome OS では、オフライン対応している Web アプリケーションの価値は非常に高いものとなります。オフラインで動かない Web アプリは使い物にならない、と言われる時代がくるかもしれません。

あとは、 HTML5 をはじめとした新しい Web 技術を活用できるようになります。某巨大 OS メーカーと違って Google は新しい Web 技術を積極的に推進していますので、それらをうまく使って魅力的な Web アプリケーションを作ることが求められるようになるでしょう。後述のように、 Web アプリケーション間の連携も重視されていきます。

Chrome OS によって、 Web のビジネスはどう変わる?

Chrome OS は Web の利用を促進するものですから、 Web 上でのビジネスには総じて良い影響を与えると思われます。とくに Aviary のようにデスクトップアプリケーション並みの強力な Web アプリケーションを公開しているサイトには大きな追い風になるでしょう。

また、もうひとつ面白いのは、個々の Web アプリケーションを連携させるためのサービスの需要が高まることです。 Web アプリケーションのローンチャーのようなサービスや、複数の Web アプリケーション間でデータをやり取りするサービスが求められてくるでしょう。現存するもので言えば、保存されたファイルを外部の Web アプリケーションに引き渡せる Box.net は、 Chrome OS では非常に使いやすいストレージサービスです。

逆に、 Dropbox のような Web とデスクトップを連携させるサービスは Chrome OS 上では意味がないので、ネガティブな影響を受けるかもしれません。 Adobe AIR のような技術も同様ですね。

Chrome OS って普及するの?

たぶん、当初はあまり売れないでしょう(^^;。 Web アプリケーションだけで満足できる人が、そう多くいるとは思えません。 NetWalker に飛びついた私でも、正直言って最初の Chrome OS マシンを買うつもりはありません。もっとも Google もそこらへんは織り込み済みだと思いますので、へこたれずに普及活動を続けていくのではないでしょうか。

ただ、 Chrome OS が歓迎されるかもしれない市場はひとつ思い当たります。それは小中学校の教育用 PC としての利用です。これならプロフェッショナルレベルのアプリケーションは必要ありませんし、最近は Web 上にも多くの教材が公開されています。セキュリティーが高くメンテナンスの必要がない Chrome OS は、学校での利用にはとても適しています。 Google が実際に教育市場を狙っていくかはわかりませんが、そういった Chrome OS に適した市場はほかにもいろいろあるのではないでしょうか。

全体的な流れとしてデスクトップから Web への移行はどんどん進んでおり、 Chrome OS がそれを加速するのは間違いありません。数年後には多くのユーザーが Chrome OS (または同様のコンセプトを持った OS)を使うようになるでしょう。

とまあ、こんなところでしょうか。 WebOS Goodies 的には、 Web アプリケーションの発展とそれらの連携を後押しする Chrome OS は大歓迎です。立ち上げはなかなか厳しいでしょうが、ぜひ普及させてほしいです。


追記:
Chrome OS 本の執筆に参加しました。 Chrome OS についてさらに深い部分まで調査した結果をまとめています。また、 Chrome OS に関連する技術や(私の担当ではありませんが) Chromium OS のビルド方法なども解説されています。興味のある方は、ぜひご購入ください!

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